このたび、AI KOWADA GALLERYでは毎日新聞で連載された平野啓一郎「マチネの終わりに」の挿画、上野の森美術館での「進撃の巨人展」ポスター制作などで話題を集めた石井正信(b.1985)の初個展を開催いたします。「literature(文学)」と題された本展で、石井は近代日本文学の代表作のビジュアライズに挑みます。
幼少時から直感的な視覚表現の世界に生きてきたデジタルネイティブ世代の石井は、幼少時より文章をうけつけず、気づくと文章表現に強い苦手意識も感じていたといいます。
2015年に小説挿絵のオファーを受けたことをきっかけに、苦手な文章表現に対峙することになった石井。そんな苦労のなか産み出された300を超える挿画たちは大きな反響をよび、2016年春には渋谷ヒカリエで挿絵展も開催されました。その経験は石井の苦手意識に少なからず自信をあたえたばかりか、文学への興味をかき立てるきっかけとなりました。
シュルレアリスムの先駆のマックス・クリンガーに影響を受けたという石井が今回のモチーフに選んだのは、奇しくもクリンガーと同時代に活躍した作家の文学作品たち。クリンガーの銅版画に対して、石井作品はペンで描かれる数多の線により構成されます。今回「文学を感じるままに落とし込んだ」と言うその画面には、繊細と力強さを併せ持つ線が集積し、混沌とした石井独自の幻想的な表現世界が描き出されます。ぜひご高覧ください。
-泉鏡花
「外科室」、夏目漱石「草枕」、谷崎潤一郎「刺青」、芥川龍之介「藪の中」、梶井基次郎「檸檬」、堀辰雄「かげろう日記」、太宰治「女生徒」
坂口安吾「堕落論」、中島敦 「山月記」
石井正信
1985年生まれ。静岡県沼津市出身。
日本大学芸術学部デザイン学科コミュニケーションデザインコース卒業。2010年より株式会社カイブツに所属し、『進撃の巨人展』のポスターデザイン、『リアル脱出ゲーム』のビジュアルデザイン、平野啓一郎著『マチネの終わりに』の毎日新聞連載時の挿絵や単行本デザインなどを手掛ける。