AI KOWADA GALLERY

EXHIBITION

西 加奈子

"i (アイ)"

2017.01.21(土) -
2017.02.05(日) 会期中無休、14:00-18:00

"i #1,2016" wax crayon on cardboards 1000 x 1600mm approx.

このたび、AI KOWADA GALLERYでは直木賞作家、西加奈子の新作「i(アイ)」(ポプラ社)の刊行によせて同タイトルの個展を開催いたします。

西がかねてからクリエイションの一環として「文学」と同じく情熱を傾けている「アート」にスポットライトを当て、西が創り上げる根源的で力強く、そして繊細な表現世界を文字のみならず、視覚的においても皆様に経験していただきたく企画いたしました。

これまでも自著の表紙絵や挿絵を手がけてきた西。「ふくわらい」の暗闇に浮かぶ色とりどりの生き物たち、「サラバ!」の暖かい気温を肌に感じるような明るい色彩の構成、私たちをまっすぐ見つめてくるまっすぐ見つめる黒い瞳「まく子」。それらは小説のストーリーを理解する鍵となる存在でもありました。最近では自身の著作のほか、雑誌「きらら」の表紙も手がけており、文学だけでなく絵画という形でも発揮される西の芸術家としての表現力に着目します。

アカデミックな美術教育と無縁の西が画材として用いるのははボール紙と、クレパス。普段スーパーで譲り受けているというボール紙の裏紙いっぱいに、様々な色彩を自在操りながら力強いストロークで描き上げていきます。

まるで油絵の具のように暑く塗り重ねられるそのタブローは、まるで西の華奢な体に宿るエネルギーが放出されているような力強さに溢れています。またそんな西の制作スタイルは、ニューヨークの街角で描く素材や場所を選ばずで自由に自己表現をするストリート・アーティストの姿にも重ねられます。

数学では虚数である"i(アイ)"は実際には見えない想像上の数。西はこの"i(アイ)"をまるで他者に「存在させられている人たち」のようだと理解します。アイ、とは私であり、愛であり、虚数のiでもある。ただその存在を根源的に示してくれる存在は世の中になんら存在しません。

西は常に自著を通して、自己のアイデンティティに悩み、進むべき方向が分からず途方に暮れる人々の背中を「あなたはあなたのままでいい」とずっと押し続けてきました。

その西からのメッセージとも言える主題は"i(アイ)"においても継続しており、シリアに生まれ、アメリカ人と日本人の夫婦に引き取られた主人公「アイ」がもがきながらも自己アイデンティティを、そして自由を獲得していく物語が、世界で起こる悲劇と並行しながら進んでいきます。

本展では小説"i(アイ)"ラストシーンが我々を360°包みインスタレーションが実現します。そこでわたしたちは西の豊饒な表現世界を味わい、体験することになるでしょう。またそれは単に"i(アイ)"の視覚表現というだけでなく、「小説家」であると同時に「美術家」でもある西が、私たちが生きる今の世の中を表現する者として「存在させられている」姿をも明らかにするものとなるでしょう。

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西加奈子

1977年 イラン・テヘラン生まれ。東京在住。
'15年に「サラバ!」で直木賞を受賞。'04年に「あおい」で小説家としてのキャリアをスタート。その後'07年に「通天閣」で織田作之助賞、'13年に「ふくわらい」で第一回河合隼雄賞を受賞し小説家としての評価を高めただけでなく、宮崎あおい・向井理主演での「きいろいゾウ」が映画化されるなど、幅広いファンを獲得してきました。今回は西加奈子の絵画制作にスポットを当てる初の展覧会となります。

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