このたび、AI KOWADA GALLERYでは吉開菜央の初個展を開催いたします。
テーマは「呼吸」。上映作品は、第19回文化庁メディア芸術祭新人賞を受賞した『ほったまるびより』や、初披露となる新作『静坐社』など、全四作品(約60分)をオムニバス形式にて上映いたします。
なお、本展においては吉開菜央がインスタレーションに挑戦し、映像ともに、ギャラリー内を「呼吸する部屋」としてご体感いただける空間を作り上げます。ぜひご期待ください。
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上映プログラム
Some rules in the morning/3分26秒/2011
I want to go out/6分55秒/2014
ほったまるびより/37分11秒/2015
静坐社-Breathing House-/12分12秒/2017
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新作「静坐社」について
2016年、3月。ある重要な家が取り壊されるので、映像として記録に収めてほしいという依頼を受け、わたしは京都に向かいました。その家は大正時代に流行した健康法「岡田式静坐法」を京都で広めていた歴史の深い場所なのだそうです。
わたしが静坐社に着いたころにはもう引っ越し作業真っただ中で、これまでこの家に住んできた4世代分の人々の物で溢れかえっていました。引っ越し作業を手伝う傍、わたしはその家を撮り始めました。
古い箪笥の引き出しや本棚をあけていくうちにある一枚のメモを見つけました。この肉筆のメモをみて、わたしは改めて、古くから人が平穏な精神を求めて試行錯誤をしてきた歴史を、とても尊く感じました。こうしたやり方で作品を制作したのは初めてのことですが、現実にあった出来事に向き合って、私なりのやり方でそれをまた編集しなおして、この作品は生まれました。いうなれば静坐社にまつわる呼吸ファンタジー、といえるでしょうか。
振り返ってみれば、過去のわたしの作品には「お腹」と「呼吸」というモチーフが繰り返し出てきたことに気づきました。それは体力がありそうに、健康そうにみえて実は割と打たれ弱い自分の身体を、作品制作を通じて鼓舞してきたような、生まれ持ったこの身体でもってこの世に折り合いをつけるために、撮影し、編集し。からだにまつわる物語を生み出すことで発見したことが作品になっているのからなのかもしれません。
全てのからだの動きは、呼吸とともにあり、そのからだから生まれてくる情動のようなもの、を感じていただければと思います。
この上映展示を通じて、多くの方にお会いできることを楽しみにしています。
吉開 菜央
1987年生まれ。ダンサー・映像作家。日本女子体育大学舞踊学専攻でダンスを学んだのち、東京芸術大学大学院映像研究科に進む。生き物ならではの身体的な感覚・現象を素材に、「見て、聴く」ことに集中する時間を映像として編集している。2015年に監督した映画『ほったまるびより』が文化庁メディア芸術祭エンターテイメント部門新人賞を受賞。「みづくろい」YCAM架空の映画音楽のための映像コンペティション優秀賞受賞(2013年、YCAM)。主なグループ展に「ほったまるびより-O JUNと吉開菜央」展(2016年、Minatomachi Art Table,Nagoya)など。