このたびAI KOWADA GALLERYでは篠田太郎の着想の脳内に切り込む、篠田太郎展"ダメ人間の着想脳内"を開催します。
自然と人工空間の関係を考察して人と自然の関わりを深く問うインスタレーションで国際的に活躍し、高い評価を得ている篠田。現在開催中のシドニー・ビエンナーレでは、粘土による大型インスタレーション"Abstraction of Confusion"を出品しています。
そんな篠田は、「ダメ人間」。「私生活の全てがダメ」と自認します。
本展では、美術家の王道を歩みながらも、なぜか自身を「ダメ人間」と称する篠田の謎に迫るべく、2000年代より着想コンセプトとして描き溜めてきた数々のドローイングに着目。《ダメ人間ドローイング》が《国際的大規模インスタレーション》へと進化を遂げる過程をご覧いただく事により、美術家・篠田太郎の脳内を紐解いていただくのが狙いです。
ひ弱な肉体を晒す裸身の男。「ダメ人間」篠田の分身とも言えるその男は、殆どのドローイングに登場します。
常に脱力した表情仕草で、機械を操作したり、何かを指さしたり。彼は自然の傍らで、いつも何らかの単調な仕事に従事しています。それは文明人たる自己の卑小さを自覚しつつ、世界を観察し、創作を通して社会に発言してゆく役割にたゆみなく挑み続ける作者の姿と重なります。
一方で、国際的に評価される美術家として数多くのインスタレーションを世界各国の大舞台で実現している篠田。それは精密な設計と考え抜かれた素材、そして職人技とも言える見事な手作業で構成されています。ドローイングの着想が見事に具現化したそれら作品は、目に見えない形而上の存在を感じさせ、私たちを魅了し続けているのです。
雑多な思考を醸成する器の大きさと、静謐な芸術的強度に満ちた完成作へと導く創造性の豊かさ。その秘密を解読する鍵が、「ダメ人間」なのかもしれません。
なお、本展では、手製望遠鏡による世界各国での月の観測を映像化した"月面反射通信技術とドラム演奏"(シャルジャ、2016)、アラブの地での枯山水の作庭"Karesansui"(シャルジャビエンナーレ2015)、"銀河"および"忘却の模型"(森美術館「ネイチャー・センス展」、2010)そしてロサンゼルス郊外をアルミニウム製のトレイラー式縁側で旅する"縁側サイト・プロジェクト(ESP)"(ロサンゼルス、REDCAT 2004)などのプロジェクトからの作品を展示する予定です。
協力:タカ・イシイギャラリー
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篠田太郎
1964年東京生まれ。造園を学んだ後に作家活動を開始する。宇宙を含む森羅万象を「人類の営みが共在するような進化する自然として理解する」ことをテーマに、見事な手作業による彫刻やインスタレーションを制作し、高い評価を受けている。
主な個展はAI KOWADA GALLERY(東京、2016年)、タカ・イシイギャラリー(東京、2012年)、イザベラ・ステュワート・ガードナー美術館(ボストン、2009年)、REDCAT (ロサンゼルス、2005年)、広島市現代美術館(2002年)など。またシドニー・ビエンナーレ(シドニー、2016年)、「SCULPTURE GARDEN(COLLABORATIVE PROJECT) / KAZ OSHIRO / TARO SHINODA」ラス・シエネガス・プロジェクト(ロサンゼルス、2011年)、「ネイチャー・センス展」森美術館(2010年)、イスタンブール・ビエンナーレ(2007年)、釜山ビエンナーレ(2006年)、横浜トリエンナーレ(2001年)などの国際展も多数。
パブリックコレクションに森美術館(東京)、ルイ・ヴィトン財団美術館(パリ)など。