AI KOWADA GALLERY は昨年より、伝統工芸の技能習得に修練を積みながらコンテンポラリーアートとしての表現に意欲を燃やす若手工芸家を応援する "kougei project" を開始いたしました。第二回となる今回は、漆芸、金工、鍛金の分野でそれぞれ活躍する3名の作品を展示・販売。平成育ちの彼らが現在の社会で体感しているコンセプトを、伝統的な工芸技術を駆使して、みずみずしいクリエィションへと跳躍させています。
乾漆技法の小川恵(b.1988)は、歪みや亀裂など漆の難点とも言える特性をあえて生かす掟破りの手法を採用。湿度などの展示「環境」が漆という素材に影響し、「時間」と共に変容させてゆくさまを可視化させています。彼女が手がける曲線的でミニマルな漆黒の立体作品は、私たちと同様に環境に左右されながら変わってゆく「生き物」といえるでしょう。
加藤貢介(b.1988)は、鉄という無機質の素材を用いて、自然の造形にも似た有機的な木目のような繊細な凹凸模様を持つ立体作品を制作。それは鉄の塊をひたすら叩き、「鍛造」で薄く延ばした後に「鍛接」で貼り合わせる工程を繰り返し、ミルフィーユ状に重ねて立体を構成するという、気の遠くなるような作業の末に生み出されるものです。ひとたび火の中に入ると柔軟な素材に変わる鉄と、常に緊張感を持って向き合い続けている加藤。鉄の表面に浮き出る木目模様を刷り出した版画作品も展示します。
非常に緻密で精巧な甲冑を制作している塩見亮介(b.1989)は、髑髏や鷲といった古(いにしえ)の霊的モチーフを、現代にも通じる普遍的な見栄や虚栄心に重ねます。ブランドや理論で武装して他者を威圧しようとするマウンティング行為は、今日でもよく目にするところ。古典的な鍛金技法を駆使して作られた戦国風の甲冑は、現代においても威圧行為から身を守る神通力を発揮してくれることでしょう。真田紐で組み上げられていて、実際に着用することも可能です。
小川恵 (おがわ・けい)
1988年広島県生まれ、
広島市立大学大学院修了
«主な受賞»
2013 第1回次世代工芸展 最優秀賞
2012 国際漆展・石川 奨励賞
--
加藤貢介 (かとう・こうすけ)
1988年神奈川県生まれ、
広島市立大学大学院修了
«主な受賞»
2013 第1回次世代工芸展 秋元雄史賞
2012 頼山陽記念文化財団KAZARU展 広島市長賞
2010 玉川大学芸術学部卒業制作展 学部長賞
2009 第38回伝統工芸日本金工展 入選
--
塩見亮介(しおみ ・りょうすけ)
1989年大阪府生まれ、
東京藝術大学大学院修士課程美術研究科工芸専攻在学中
«主な受賞»
2015 第3回 次世代工芸展 最優秀賞
2014 東京藝術大学卒業修了制作展 三菱地所賞
2014 第2回 次世代工芸展 小和田愛賞
2013 藤野金属株式会社 藤野賞