「私たちの世界はいちいち確認しない無数の了解で成り立っている。それをあえて指し示すことで私たちは自由な精神のあり方に触れることができる。久村卓はそうしたアーティストの重要な仕事を実践するひとりだ。」住友文彦 (キュレーター)
リチャード・セラ、カール・アンドレなどによりアートの一時代を築いた『ミニマルアート』。久村が本展で作りあげるのは"現代を生きる私たちの等身大の感覚に、ミニマルアートが翻訳されている空間"です。
「メーカーのロゴマークに刺繍が施し加えられ、アレンジされたシャツ」「身近な素材を"ただ切り取っただけ、 または素材を"繋ぎ合わせただけ"の椅子や机」
「穴の空いたハイブランドがファストファッションの生地でかけばぎされたもの」等、久村の手による『家内制スカルプチャー』をご覧いただきます。
「彼が示唆はしたが自分では探求しなかったもう1つのやり方は『交換可能なレディメイド』だった。 たとえば、レンブラントの絵をアイロン台として使ってしまう、という例をあげている。 日用品が芸術になるのではなく、芸術品が日用品になる、というわけだ。」「コンセプチュアル・アート」 トニーゴドフリー著 (岩波 世界の美術)・デュシャンについてより抜粋
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久村 卓(ひさむら・たく)
1977年東京都生まれ。2001年多摩美術大学彫刻学科卒業。
私たちの身の回りにあり、私たちが特別に意識を持たないような「壁・床・台座・家具・・・ などを『あってないようなもの』と定義付け、それらをアート作品として展開することによりその存在を私たちに再認識させることを試みている。
近年の展示に「行きつ戻りつ・つくり・つくられること」ナディッフギャラリー(東京、2012年)「あってないようなもの」3331ギャラリー(東京、2012年)「M.A.P」トーキョーワンダーサイトベルリン(ベルリン、2013年)など。主な受賞に日独友好展(2011年)。3331アートフェア美術手帖賞受賞(2015年)など。