万代洋輔は美術家として活動しはじめた2006年より2008年まで、森や林・工場などに出向き、現場にある投棄物(ゴミ)を積み上げた立体作品を作りその場で撮影する、という独自な写真作品を発表し ました。その作品は後藤繁雄氏やTim BARBER氏などから大きく評価されます。
同時に参加していた、アーティストグループ"ミホカンノ"も様々な分野から期待や注目を受け、万代は 国内外の個展・グループ展に精力的に参加しました。
数々の展示のオファーを受けながら展示のために制作をする、そんな多忙なアーティスト生活を送っていた2008年ごろ、体と心のバランスを崩し双極性障害に罹ります。
大変な闘病生活の中「生きる事を困難に感じているさなか、アートが真実を経験する力だということを感じた」彼は、彼の病気に支障せずにできる制作手法を探求しはじめます。
2009年には、カメラではなくスキャナーを撮影ツールとして使用し家の周囲をひたすらスキャナーを壊しながら数百回におよぶスキャニングを繰り返した作品「sunrise」「321」「545」を制作、発表しました。
3年ぶりの個展にあたる今回は、病状の理由で直接的な"撮影"という行為から離れ、彼が今できる手段で『最良の視覚体験』を探し求めながら、それを鑑賞者である私たちに経験させることを目的とした 展示になります。
本展の作品は、おもにインターネット上などに存在する既存のイメージや彼自身が過去に撮影した写真など、あらゆる種類の画像データの積層を彼が足したり引いたり掛け合わせたり、時にはトレースしたりして作ったデータと、「絞殺未遂」「土の中から出てくる」「泣きながら笑う」という奇妙なタイトル の組合せにより構成されます。
作品を空間としてとらえ、例えば作品上に埋め込まれた画像というギミックといった、奇妙な退屈さや難解さを与えることも意図された作品の上で、イメージ(視覚情報)やタイトル(文字情報)は結びついたり離れたりしながら、わたしたちの脳裏で戯れます。
そこで私たちは「探索」と「発見」を強いられ、万代の言う「最良の視覚体験」へ誘引されるのです。
「最良の視覚体験は、奇妙な退屈さや難解さがあり、嫌な感じがして、かつ純粋な生きる意欲をあたえる」と彼は言います。ぜひご高覧ください。
貴方に見せるべき事は、俺の無意識。
だがそんな事が実現してしまったら、それは貴方が狂ってしまった証拠にもなる。
他人の無意識を見るという事は、俺が見た夢を同じ様に貴方が見る様なことだから。
俺の無意識と貴方の無意識を接続させる為に作品を存在させようとしている。
無理だがそこに少しでも近づく事は、最良の視覚体験をあたえる為に必要な事だろう。
最良の視覚体験は、奇妙な退屈さや難解さがあり、嫌な感じがして、かつ純粋な生きる意欲をあたえるものだと思っている。
(万代洋輔)