沖縄とホモセクシュアリティ。
ともすれば声高に扱われそうなテーマだが、ミヤギフトシの視線を介すと詩的で軽やかになる。
自身のアイデンティティに端を発する"沖縄"と"ホモセクシュアリティ"という存在をミヤギは
他者との密接な関係性をも想起させるような、極めて個人的なまなざしで語る。
本展「American Boyfriend」では、沖縄人男性とアメリカ人男性という、
言語も見慣れた風景も異なるふたりが、沖縄で恋に落ちる可能性についての考察を試みている。
被写体と撮影しているミヤギの関係性を感じさせる、長時間露光による写真作品は、
ふたりの情事の後を覗き見しているような淡い罪悪感が青い小さな炎のようにちらちらとまたたき、
低温火傷のような痕を残してゆく。
沖縄の伝統的な紅型のように写真を切り抜くことで、写真の向こう側に新たなレイヤーを生み出す
「カットアウトピース」は写真を多面的に見たいというミヤギの発想から生まれた。
本来写真の表面にいるはずの被写体が切り取られ、存在しないこの作品は、
見えなかったはずの向こう側が透けて見え、曖昧ながらも確かに存在する
「他者との境界」を想起させる。
自身と他者の間の見えない境界線は、匿名性が高くなり幾重ものレイヤーに覆われた
現代社会において、ますます深く手の届きにくいものになっている。
"沖縄"と"ホモセクシュアリティ"というテーマで沖縄における隔たりが示される
本展「American Boyfriend」において、ミヤギは個人レベルでの「見えないつながり」に、
気付くこと、または声をくみとることを試みているのだという。